永野裕之のBlog

永野数学塾塾長、永野裕之のBlogです。

夏至に一番暑くならない理由

今日は夏至です。

一年の中で一番昼が長く、太陽の高度が最も高くなる日です。

地球には四季の変化があるのは、地球の地軸が傾いているからだと理解している人は多いと思いますが、一方で

「日照時間が一番長いはずの夏至の日に最も暑いわけではないのはどうして?」

と疑問に思う人も少なくないと思います。

そこで今日はその理由を考えてみたいと思います。

夏至に一番暑くならない理由


確かに曇や雨の日よりもお天気の日の方が気温は高くなるわけですから、日照時間が最も長い夏至の日が一年で最も暑い日になりそうな感じはします。

ここで、連想して欲しいのはヤカンでお湯を沸かす時のことです。ヤカンをコンロにかけて最強火にしたとしても、その瞬間にヤカンの中のお湯の温度が最高になるわけではありませんね?ヤカンをコンロで加熱すると、コンロからの熱(加熱)が、ヤカンから逃げる熱(放熱)を上回っている限り、ヤカンの中の温度は上がり続けます。例えば最初に最強火にして、徐々に火の強さを弱めたとしても、ヤカンにとっての熱の収支が+(プラス)の間は温度は上がり続けるのです。反対に加熱よりも放熱の方が多くなれば今度はヤカンの中のお湯の温度は下がり始めます。この下がり始めがヤカンの中のお湯の最高温度です(今は話を簡単にするために沸騰する前に温度が下がり始めるとしましょう)。まとめますと

加熱 > 放熱 の間 … 温度上昇

加熱 < 放熱 の間 … 温度下降

というわけです。繰り返しますが、加熱が最大の瞬間に温度がピークになるわけではありません。車が最高速度から減速しても、進行方向に進んでいる限り、スタート地点から遠ざかり続けるのと同じことです。

実際、一日の中での気温変化でも、太陽高度が最も高い(日照量が最も多い)正午よりも、1~2時間後の13時~14時あたりがその日の最高気温になります。

同じ理屈で、年間の最高気温も地面、空気が温まるまで時間がかかるため太陽高度が最も高い夏至より遅れて最高気温が出現します。特に日本は夏の前に梅雨があり、この期間の実質の日照時間が短いため、最高気温にはならず、梅雨が明けてから本格的に地面が熱せられ、8月上旬にピークを迎えることになります。

一年の気温の場合、これに加えて気団の動き等も絡んでくるため日射量と気温の関係はもっと複雑になりますが、基本的には日射量が最大でなくても熱収支が+(プラス)の間は気温は上がり続けると考えることができます。

ちなみに実際の地球の熱収支はヤカンほど単純ではなく次の図のようになっています。
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ムーンイリュージョン

上の図の様に、夏至の時に満月が見えたとすると、満月は太陽の反対側に登るので夏至の日の満月は最も高度が低くなります。
下の写真は2008年の夏至の2日前にギリシャのスニオン岬から顔を出した満月を撮影したものです(中央から右の建物は2400年前に建設されたポセイドン神殿。NASA提供)。

このように高度の低い月はとても大きく見えます。ただしこれは、大気の屈折率の影響が少しはある(通過する大気の層が厚いほうが屈折の効果が高まり大きく見える)ものの、ほとんどは目の錯覚(ムーンイリュージョン)だと言われています。
参考サイト⇒Today's Moon 「真夏の夜の月の錯視」  

逆に新月の時は月は太陽と同じ方向に上がるため、最も高度が高くなります。ちなみに今年は昨日が新月(今日は月齢1)だったので、残念ながらムーンイリュージョンを楽しむことはできません。