あのときわからなかった公式の意味が、いまこそ理解できる!
高校数学から大学数学の入口まで、学びやすく、理解しやすい独自の構成で解説。定理や公式に隠された「本当の意味」がわかり、真の理解が進む。のみならず、数学という学問の「全体像」も見えてくる、大人の再入門&再発見。
本書のテーマは、
「高校数学とは何だったのか?」
という問いに答えることです。
大人のための学び直し本や、現役の高校生のための参考書にも良書・類書が少なくない中で本書の特徴をあげるとすれば、つぎの3点にまとめられると思います。
- 分野別の再構成(数学マップ)
- 行間を徹底的に埋めた解説
- 歴史や社会との繋がりを紹介したコラム
ひとつずつ、書きますね。
分野別の再構成(数学マップ)
高校生が数学に迷う一つの理由は、各単元の内容が互いにどのように関係するかが見えづらいことにあるのではないでしょうか? カリキュラムに沿って、次々に新しい単元を学ぶ必要があるので、今学んでいる単元がなんの分野なのか、そして過去に学んだ単元とどのように関係するのかを理解をする余裕が高校生にはなかなかありません。
そこで、本書では高校数学に登場する各単元を以下のように7つの分野別に整理して再構成しました。こうすることでそれぞれの連携がわかりやすくなると思います。
- 幾何学:説得術として発展した数学
- 代数学:方程式を解くための数学
- 解析幾何学:数と図形の統一
- 数論と数列:1,2,3…が一番難しい!?
- 解析学:関数と微積分
- 確率と統計:偶然を処理するための数学
- 大学への数学:線形代数と複素数平面
また、数学全体を俯瞰してもらえるように、巻頭には以下の「数学マップ」も用意しました。これは中学・高校・大学(1・2年程度)の数学の内容を、高校数学にクローズアップしてその繋がりをまとめたものです。
行間を徹底的に埋めた解説
普段教えていて多くの生徒さんが躓くところは特に気をつけて詳しく書きました。式変形は端折らずにすべて記載しましたし、公式等を利用する際にはその都度ガイドを入れてありますので、途中でなにをやっているかがわからなくなってしまう、ということはおそらくないと思います。また読者がモヤッとした疑問を持ちそうなところはできるだけ(注)を設けてフォローしています。
数学の勉強は
- 新しい概念を学ぶ
- 定理や公式の意味を理解する
- 問題を解く
という3つのステップを踏むのが常道です。
ただし高校では、定期試験や大学入試を意識するあまり、「3」に偏った勉強をしてしまうことが少なくありません。学生は本来の目的を見失ったまま、「解き方を覚えて問題を解く」ということに終始してしまいがちです。そうなると問題が解けない学生にとっては、数学は苦行のようになってしまいますし、問題が解ける学生にとっても、クリアできるかどうかが最大の関心事となるゲームの類と数学は大差がなくなってしまうでしょう。
一方、大学の数学では上記の「1」と「2」にこそ重きが置かれます。なぜなら、大学では数学を学問として捉えているからです。学問である以上、それを学ぶ意味や目的をつかむために、「何が新しい概念なのか」、「新しい概念を通じてどのようなことがわかるのか」といった事が最も重要なのは言うまでもありません。
「高校数学とは何だったのか?」という問いに答えを出すことは、言い換えれば、高校数学を学問として捉え直すことです。だからこそ本書では、学ぶべき概念を紹介することと定理や公式を導くことに多くの紙面を割きました。ブロックをひとつずつ積み上げていくように本書を読み進めていただければ、「あのとき学んだあの数学はこういう意味だったのか!」と膝を打ってもらえるだろうと自負しています。
各節には問題も用意されていますが、これらは実際に解く必要はありません(もちろん、腕に自信のある方は是非挑戦してみてください!)。それぞれの問題に付けた解説・解答を通して、「解法のテクニック」がなくても、概念や定理・公式の本質的な理解があれば問題はちゃんと解けるということを分かっていただければ十分です。そういう意味では、「数学の勉強の仕方がわからない」、「いくら解法を暗記しても問題が解けない」と悩む現役の高校生の皆さんにとっても、お役に立てることがあるでしょう。
本書は2014年4月に上梓した『 ふたたびの微分・積分 』の「弟分」にあたります。前著では高校数学の頂点である「微分・積分」を、徹底的に行間を埋めて、できるかぎり丁寧に説明しました。そのコンセプトは本書も変わりません。ただし、微分・積分の内容は前著と重複するため「超概論」としてその概念のみを紹介するに留めてあります。微分・積分について定理や公式の詳しい導出・計算テクニックにご興味のある方は是非前著を御覧ください。
歴史や社会との繋がりを紹介したコラム
本書には全部で19のコラムが収められています。タイトルだけ紹介しますね。
- 「数学」の語源について
- 幾何学を学ぶ本当の理由〜パスカルの説得術〜
- 古代の「方程式」〜代数学の本質は一般化〜
- 解の公式をめぐるドラマ〜3次方程式の解の公式の紹介〜
- デカルトの革命〜幾何学と代数学の融合〜
- オイラーが考案した絶対に正しい推論〜論理と領域〜
- 美しも気高い「数学の女王」
- 友愛数と完全数とメルセンヌ数
- 「数学的帰納法」というネーミングについて
- 函数と自動販売機
- 三角関数なんて役に立つの?〜フーリエ展開の恩恵〜
- 対数は感覚を司る?〜ウェーバー・フェヒナーの法則〜
- ネイピア数(自然対数の底)e
- 直感を裏切る確率
- 相関関係についての注意点
- ベクトルの使いみち〜その2つの顔〜
- ベクトルの「成分」と基底の取り換え
- 行列の使いみち〜マルコフ連鎖とシェア分析〜
- オイラーの公式を導く
コラムには、高校で学ぶ数学が歴史の中でどのようにして生まれ、社会の中でどのように役立っているかを、また高校数学と大学数学の繋がりについても書きました。教科書的な記述とは別の側面から高校数学を捉えることで、「立体的な理解」が進むことを期待しています。
目次&立ち読み(Amazon)
謝辞
正直なことを申し上げると、私はこの本を書き始めたとき、まさかこれ程のボリュームになるとは想像していませんでした(全592頁!)。もっと簡単にざっと概観することで、「高校数学とは何だったのか」をお伝えできると思っていたのです。しかし、書き進めていくうちに、どうしてもお伝えしたいこと、説明を端折れないことが次から次へと湧いてきて、どんどんと分量が膨れ上がってしまいました。
ふつう書籍の執筆を行う際には、頁数の上限があって、原稿をカットせざるを得ないということが珍しくありません。でも、すばる舎の編集の稲葉健さんには「分量のことは気にせず、徹底的にやってください」という有り難い励ましのお言葉を頂戴し、本書には私の書きたいことをすべて書かせてもらうことができました。この場を借りて深く御礼申し上げます。
余裕で自立します♪
自著の中でもダントツの分厚さ
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