昨日、急遽、ABEMAプライムに出演させていただきました。
テーマは、三角関数の必要性について。
番組出演の経緯
きっかけは、維新の会の藤巻議員の以下のtweetでした。
「三角関数よりも金融経済を学ぶべきではないか」
— 藤巻健太 衆議院議員 (@Kenta_Fujimaki) 2022年5月17日
金融教育をテーマに、財務金融委員会で議論させて頂きました。 pic.twitter.com/aUmlrvSaKv
15:00頃、昼寝をしていたら、番組のディレクターの方からこのBlog経由で「本日21:00からの番組に出演してもらえませんか?」との問い合わせが入りました。
ちょうど数日前にアップされた東洋経済の記事(↓)を見てのご連絡だったようです。
昨日は17:00~21:00まで授業が埋まっていたので、打ち合わせもほとんどできないことから、「このような状況ではやはり難しいでしょうか?」と返信したところ、なんと「是非、お願いします!」とのこと。
16:00過ぎに電話で10分ほど最低限の打ち合わせだけをして、すぐに授業突入。21:00に授業が終るやいなや、番組のZoomにログインしました。
果たしてどうなるものやら、と内心ドキドキしていましたが、司会の平石直之さんはじめ、EXITの兼近大樹さん&りんたろーさん、西山里緒さん、パックンさん、若新雄純さん、私と同じくゲストの森山たつをさんが大変優しく接して下さったので、番組が始まってからはとても楽しくお話させていただくことができました。この場をお借りして、厚く御礼申し上げます!
三角関数の魅力
私は、数学教師として高校生が三角関数を学ぶことにもちろん賛成、の立場です。
理由はいくつもありますが、まずは三角関数の魅力を箇条書きにしてみます。
- 三角比は、古代ギリシャのプトレマイオスが星空を見上げる角度と星の位置との関連から生み出したものであり、また「今、自分はどこにいるのか?」という人間の根源的な欲求のもとに育ってきた考え方。人類がきわめて長い間守り続けた数学のひとつ。
- 三角比は、やがて単位円(半径1の円)の上の点として定義し直され、直角三角形から脱皮することに成功し、三角「関数」に格上げになった。円上の点は同じ所をぐるぐるまわるので、周期性がある。三角関数は高校生が出会う、初めてのそして唯一の周期関数。
- 周期があるということは、とてつもなく遠く離れたところで起こることが、手元の状況から推測できることを意味する。
- 周期関数である三角関数のグラフは波。よって波を生じる現象(電磁波、音波、地震波、交流回路の電流や電圧等)は三角関数で表される。
- たとえば、振り子の運動は単振動という物理現象で近似できる。単振動の単は「三角関数ひとつで表せる振動」という意味。振り子の運動は(振り幅が大きくなり過ぎなければ)三角関数で表すことができて、不思議な振り子の同時性も三角関数で鮮やかに記述することができる。
- フーリエ展開、という大学以降に学ぶ方法を使えば、世の中のすべての曲線は三角関数の和で表すことができる。三角関数はあらゆる曲線の代表と言っても過言ではない。
- フーリエ展開は、データの圧縮や地震波の測定に応用されている。フーリエ展開がなければ、メールやSNS で気軽に画像や音源を送ることはできない。
…etc.
これらは三角関数の魅力、応用範囲のごく一部に過ぎません。
私が三角関数は学ぶべきだと思う理由
私が高校生も是非三角関数を学んだほうがいい、と思う一番の理由は、学校の数学以外の分野で出会う確率が非常に高い関数だからです。
番組でもお話しましたが、私自身も高校2年生のときに物理の授業の中で、単振動が三角関数で表せることを知り、感動した経験があります。でも、もしあの時点で三角関数に出会っていなかったら、きっとあの感動を味わうことはできなかったでしょう。
パックンさんや若新先生も仰っていましたが、数学をはじめ、学生の皆さんがさまざまなことを勉強する理由は「将来役に立つから」というだけではなく、将来のための「種まきになるから」だと私も強く思います。
私自身がそうであったように、人生のどこに出会い・感動のポイントが潜んでいるか分かりません。だからこそ、色々な種をまいておいて、自分にとっての「価値あるなにか」に出会ったときに「あっ!あのときのあれだ!」と気づけるようにしておいて欲しいのです。
かつて、スティーブ・ジョブズは今や伝説となっているスタンフォード大学での講演で「Connecting the dots(点と点をつなぐ)」と言いました。
将来を見通して、点と点をつなぐことはできない。人生を振り返った時にしか、点と点をつなぐことはできないのだ。だからこそ、今はバラバラに思える点でもやがてはつながると信じて取り組みなさい。(中略)この手法が私を裏切ったことは一度もなく、そして私の人生に大きな違いをもたらした。
というのがそのスピーチの趣旨です。
三角関数もそんな点のひとつであり、他の点と結ばれる可能性が非常に高い点だと私は思います。
だからこそ、学生の皆さんには是非、三角関数を学んで欲しいです。
そして、自分のように数学を教える立場にいる者は、三角関数の魅力を存分に語っていかなければいけないと思います。
参考図書のご案内
三角関数をはじめ、高校数学のすべてについて(問題を解くというより)その内容や価値を、背景や応用と共に知りたい方には、拙書『ふたたびの高校数学』をお薦めします。大人の方はもちろん、なんで「三角関数(数学)なんて勉強しなくちゃいけないんだ!?」と思っている学生の方にも是非読んでいただきたいです。
高校数学全部はしんどい、と思われる方は数IAに特化したこちらを是非どうぞ。
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