永野裕之のBlog

永野数学塾塾長、永野裕之のBlogです。

太陽系ができるまで〜最初の種は暗黒の中にあった〜

《以下の記事は、十数年前に別のBlogにひっそりと書いた記事を、少し手直ししたのものです。このBlogの他の記事とはちょっと雰囲気が違いますが、良かったら読んでみてください。》

夢をかなえた人、大きなことを成し遂げた人、彼や彼女たちは生まれた時から才能と環境に恵まれ、他の人とはまったく違ったのでしょうか?

テレビやマスコミで目にするまばゆい輝きを放つ人々や、いつも賞賛をあつめてやまないあなたのまわりの「成功者」の人々と比べて、何者にもなれない自分の才能に限界を感じたことはないでしょうか。


私は大学で「地球惑星物理学」を専門に学びました。

その中でも特に私が興味をひかれたのは以下に書く「太陽系の誕生」です。

その過程は私にはまったく意外なものでした。

想像を絶するほどの巨大なエネルギーと質量をもつ太陽と私たちの地球が存在する太陽系のなりたちから私は教えられました。

「結果がどんなに大きくても、始まりはほんの些細な事なのだ」と。

そして、これは人生における自己実現でも同じだと思うのです。

太陽系の誕生

私たちが暮らしている地球は限られた時間の中で生きているということをご存知でしょうか。

星にも一生があり、星もまた私たち人間と同じように生まれ、そして死んでいくのです。

もちろん地球にも始まりがありました。

そして、太陽にも始まりがあったのです。

宇宙空間にただようガスと塵~はじまりはほんの些細な濃淡の差だった~

太陽は決して最初から太陽であったわけではありません。

にわかには信じがたいことかもしれませんが、太陽は宇宙空間にただようガスと塵が集まってできたものです。

太陽だけではありません。

太陽系に存在する多様な天体はすべて同じ材料(ガスと塵)からできています。

太陽の一世代前の星の死(超新星爆発と言います)によって散らばった宇宙空間のガスや塵の中にはごくごく小さな違いでしたが密度の濃いところと薄いところがありました。

そのほんのわずかに密度の濃い部分が太陽系誕生の舞台となります。

太陽の「種」~暗黒星雲の中のわずかな可能性~

周囲より密度が高い部分はそれだけ大きな重力(万有引力)を持つのでこの密度の濃い所にほかのガスや塵が集まるようになります。

周囲のガス(おもに水素)が集まると密度の差は徐々に大きくなり密度の濃いところは重力によってちぢみはじめますが、この段階ではそれは「暗黒星雲」という闇の中に埋もれています。

まだ光を放つことはなく、表面温度はマイナス250℃という冷たさであったことが分かっています。

この暗黒の闇の中に強大なエネルギーを放つ太陽の種が生まれたのでした。

原始太陽~輝きはじめるそのとき~

太陽の種は次に回転をしながら激しくちぢんでいくようになります。

このときに種の中心部の温度・圧力・密度はしだいに高くなりやがて、ちぢむスピードは穏やかになり輝くガス球となります。

この時になっても中心部の温度は低かったので現在の太陽のような核融合反応(水素がヘリウムになる反応)はまだはじまっていませんでしたが、とにもかくにも太陽は輝きはじめます。

「原始太陽」の誕生です。

惑星の誕生~100億個の卵から生まれた8つの惑星~


原始太陽が形成されたとき、太陽になりきれなかったガスや塵は回転によって、原始太陽のまわりに円盤状に分布しました。

そしてこの円盤の中でもやはり密度の濃淡が生まれ、無数の小さな惑星(微惑星といいます)がつくられました。

その数は100億個とも言われています。

この微惑星たちは互いに衝突をくりかえし、「原始惑星」が形づくられました。

太陽に近い原始惑星はさらに衝突を繰り返して地球型惑星に、太陽から遠い原始惑星は周囲のガスをとりこんで木星型惑星へと成長していきます。

こうして現在の8つの惑星が生まれました。

またそれと時を同じくして原始太陽も収縮を続けていました。

密度はさらに高くなり、中心温度はついに1000万℃を超えるようになります。

こうなると中心部で核融合反応が始まり、収縮は止まります。

原始太陽は、ついに自らの力で輝くことのできる恒星へと進化を遂げたのです。

こうして太陽系が誕生しました。

 

いかがでしょうか。

驚かれた方もいらっしゃることでしょう。

太陽の種が生まれた場所は、周囲よりほんのわずかだけ密度が濃かっただけで、他に特別なことは何もありませんでした。

私が成功へのヒントを太陽系の形成過程に重ねるのはまさにこの点です。


やりたいことが見つからない、と悩まれていませんか?

人より優れた才能がないと、嘆かれていませんか?


もしあなたが今、自分は恵まれていないと悩まれているのなら、どうぞこの太陽系誕生のストーリーに思いを馳せてみてください。

最初から輝く太陽が存在したわけではないことを思いだしてください。

誰の目にも見つからない、どんな観測にも姿を見せない「暗黒星雲」の中に太陽の種はあったのです。

どんな人の中にも「太陽の種」はあります。

それを見過ごしてしまうのは、「完成された太陽」を自分の中に探そうとするからです。

種は暗黒星雲の中に埋もれています。

それはまわりよりほんのわずかに密度が濃いだけの小さな小さなものです。

あなたの持っている才能やキャラクターの中でほんのわずかでも他より密度の濃いところをどうぞ慎重に探してみてください。

ここで他人と比べて密度が濃い所を探そうとしてはいけません。

あくまであなた自身の中で一番密度の濃い部分を探すのです。


あなたの種はあなただけの種であり、それはやがてあなただけの太陽になるのですから。

そして、どんなに小さくても「種」を見つけたのなら、どうぞそれを大事に大事に育てててください。

ひとたび成長をはじめた「種」はやがて急速に成長の度合いを速め、やがて自ら輝く太陽となります。

そのまばゆい輝きはあなたにしか放つことのできない、この世に2つとない尊い輝きです。

その光にあなた自身が包まれるとき、あなたのは自己実現はきっと達成されていることでしょう。

かく言う私も、自分だけの太陽の輝きを求めてもがいている最中です。