昨日は、私が敬愛してやまない本名徹次さんが指揮をされた伊福部昭先生の生誕110年、ゴジラ生誕70年記念コンサートに伺いました。
コンサートは以下の3部構成。
<第1部>
松田華音:子供のためのリズム遊び(抜粋)、ピアノ組曲
石丸由佳:SF交響ファンタジー第1番(和田薫編曲パイプオルガン版)<第2部>
和田薫 指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
SF交響ファンタジー第1番、第2番、第3番(全曲)<第3部>
本名徹次 指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
交響譚詩
シンフォニア・タプカーラ会場:東京オペラシティ コンサートホール
18時にスタートして、終わったのは21:20頃という盛りだくさんのコンサートでしたが、会場の熱気も凄まじく、内容的にも非常に充実していました。
伊福部昭先生と言えば、映画「ゴジラ」の音楽を作曲されたことで有名ですが、純音楽としても、『日本狂詩曲』『シンフォニア・タプカーラ』『ピアノとオーケストラのためのリトミカ・オスティナータ』など多くの作品があります。
また後進の指導にも尽力され、門下からは芥川也寸志さん、黛敏郎さん、松村禎三さん、池野成さん、そして今回第2部の指揮をされた和田薫さんなど、錚々たるメンバーが出ています。
伊福部先生の音楽は、オスティナート(一定の音型を何度も反復する技法)が大きな特徴です。昨晩のコンサートでも、これでもか、というくらいに執拗なフレーズの繰り返しが聞かれましたが、その反復が心身に積み重なり、やがて熱狂とも言える興奮に繋がるのは、伊福部音楽を聴く醍醐味ではないでしょうか。
私は、20代の頃から本名さんには本当〜に可愛がって戴いて、様々な現場にご一緒させて頂きました。当時から本名さんは邦人作曲家の作品をとても大切にされていたため、ついヨーロッパの作曲家の作品にばかり目が行きがちだった私に「祖国の作曲家」を聴く喜び、演奏する喜び(と使命)を教えて下さいました。
昨日の演奏会でも、その喜びを十二分に堪能しました。
ロシアで長く研鑽を積んでこられた松田華音さんのリズミカルで力強いピアノ独奏からは、北海道ご出身の伊福部先生の音楽が、実に生々しい鮮度で立ち上がっていました。
和田薫さんが編曲されたパイプオルガン版の「SF交響ファンタジー第1番」を弾かれた石丸由佳さんの演奏は、楽器全体から「ゴジラ」の鳴き声が聞こえてくるような迫力がありました。ご本人も仰っていたように、パイプオルガンを鳴らす「風」と伊福部先生の音楽のバックボーンとも言える「土」はとても相性が良いように思いました。
和田薫さんが指揮された第2部は、伊福部先生への尊敬と作品への愛情を非常に強く感じるものでした。1983年に日比谷公会堂で行われた「伝説のコンサート」のために、伊福部先生ご自身が、ゴジラシリーズの映画音楽をメドレーにして繋げた「SF交響ファンタジー」の大熱演。会場の盛り上がりも凄かったです。
そして、本名さんが指揮された第3部!
いつも思うことですが、本名さんの指揮ぶりは魔法使いのよう。昨日も、その流麗でいて力強い指揮から引き出される、とてつもないエネルギーを孕んだ音楽は、心の奥底に響きわたりました。興奮に誘うリズムの乱舞、日本人なら誰もが郷愁を覚える叙情的なメロディーなどが、本名さんの変化自在の指揮振りによって、次々に命を吹き込まれていきました。伊福部先生の作品を愛し、楽曲に精通されている本名さんならではの演奏だったと思います。
東京フィルハーモニー交響楽団の皆さんも大熱演!伊福部作品を立て続けに演奏するのは、体力的にも非常に大変だと思いますが、最後の最後まで非常に充実した響きを聴かせてくれました。
映像の紹介
この動画は、昨日の演奏会も主催されたキングレコードさんによって、つい先日公開されたものです。
2004年5月31日の伊福部昭90歳の誕生日に東京サントリーホールで開催された「卆寿を祝うバースディコンサート」の初Blu-ray化を記念して、期間限定で公開されています。
本名さんが指揮をされたこのコンサートには、私もアシスタントして参加させていただきました(非常に懐かしく、良い思い出です!)。
おまけ
席についてパンフレットを見ていたら「ハロ〜!隣は君かあ!!」という声がしたので、顔を上げると、なんと本名さんの師匠でもある井上道義先生が!! 先生のお隣で演奏会を聴かせていただくなんて、もの凄く貴重な経験でしたが、緊張もしました〜(笑)
写真
懐かしい方々と再会できて嬉しかったです!
後ろには、梶本音楽事務所の敏腕マネージャー小倉さんのお姿も見えます。