永野裕之のBlog

永野数学塾塾長、永野裕之のBlogです。

音楽が言葉になる瞬間—下野竜也さんとマーラー交響曲第1番(音楽の魅力発見プロジェクト)

本日は、すみだトリフォニーホールで開催された『下野竜也プレゼンツ!音楽の魅力発見プロジェクト』に伺いました!

このシリーズは、指揮者の下野竜也さんが企画監修・司会・そして指揮を一手に担うユニークな公演で、毎年この時期に恒例として行われています。今回のテーマは「マーラー/交響曲第1番 徹底大解剖」。今年は12回目ということです。

私は初めて伺ったのですが、その内容の充実ぶりに終始心を奪われました!!

第1部では、下野さんがマーラーの交響曲第1番の魅力を、実演を交えながら徹底的に解説。新日本フィルハーモニー交響楽団の皆さんが、解説の直後に該当箇所を実際に演奏するという、何とも贅沢なスタイルです。

なかでも印象的だったのは、下野さんのお話の上手さです。台本を一切見ずに、淀みない言葉で聴衆を導き、時折いや随所にユーモアを織り交ぜながら場内を和ませてくれました。

オーケストラの方に直接インタビューをする場面もありました。たとえば、トロンボーンは大盛り上がりのフィナーレの最後に音が無いこと(衝撃の事実!)を取り上げて、トロンボーン奏者に「どんな顔されているんですか?」「吹いているふりをしています(笑)」などのやりとりもあって新鮮でした!

第1部の後半では、バリトン歌手の宮本益光さんが登場し、マーラーの『さすらう若人の歌』を披露して下さいました。この曲の旋律は、交響曲第1番に多く転用されているからです。

歌詞の内容は以下の通り

恋人への思いを胸に旅立った若者が、失恋の痛手を抱えながら自然の中に慰めを求め、最後には『菩提樹の下で安らかに眠りたい』と、心の死と静けさを求める境地に至る…

特に最後の菩提樹の下りで響いたこの世のものとも思えぬほどの美しい声=天上の声には、全身に鳥肌が立ちました。当代随一のバリトンでいらっしゃる宮本さんの面目躍如といったところでしょうか。

そしていよいよ第二部は交響曲第1番の全曲演奏です。下野さんのタクトが冴え渡ります。

よく、優れた指揮者は音楽の「色」を出すと言われますが、下野さんはさらに音楽の語る「言葉」までをも変幻自在のタクトで描き出されます。

第1部で楽曲の仕組みを学んだ後ということもあって、曲の仕掛や工夫が手に取るようにわかり、音楽が豊かに立体化していく体験に胸が高鳴りました。そして、フィナーレへと向かうエネルギーの高まりも圧巻で、最後はホール全体がすさまじい熱気に包まれました。

演奏後、オーケストラの皆さんが満足そうなお顔をされていたのも印象的でした。

下野竜也さんのこと

終演後に、下野さん、宮本さんと撮っていただきました!貴重な一枚です♪

下野さんを、私ごときが「同門」などと称するのはおこがましいのですが、私にとってはまさに尊敬すべき兄弟子にあたる方です。

私が指揮者を志し、湯浅勇治先生の門を叩いたのは2000年のことでした。ちょうどその頃、下野さんは2000年の東京国際音楽コンクール〈指揮部門〉で優勝され、翌2001年にはブザンソン国際指揮者コンクールでも優勝されました。国内の最高峰と世界の最高峰を立て続けに制覇され、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進しておられたのです。

当時、レッスンで拝見した下野さんの指揮ぶりには、本当に舌を巻きました。弾いて下さるピアニストの音色は瞬く間に変容し、部屋のボルテージが上がり、さらには湯浅先生のまなざしまでが一変しました。その光景はいまなお鮮烈に記憶に刻まれています。

その後は読売日本交響楽団京都市交響楽団広島交響楽団といった名門楽団で重要なポストを歴任され、あれよあれよという間に日本を代表する指揮者として揺るぎない地位を確立されました。現在はNHK交響楽団の正指揮者、札幌交響楽団首席客演指揮者などの重責を担っておられます。

そして、私は、下野さんの温かなお人柄にもいつも心を打たれます。本日の演奏会でも、オーケストラの方々へのさりげない気遣い、端正なステージマナーなど、随所にお人柄が感じられました。

下野さんは、音楽の力そのものを体現し、私たちに「音楽と共に生きる喜び」を教えてくださっているように思います。

これからも変わらぬご活躍を祈念しております!