永野裕之のBlog

永野数学塾塾長、永野裕之のBlogです。

【新刊】読むだけでわかる「微分」〜考え方から証明、そして大学数学まで〜 (ブルーバックス)

2026年1月22日に新刊『読むだけでわかる「微分」 考え方から証明、そして大学数学まで (ブルーバックス)』が出ます。

以下は出版社(講談社)が付けてくれた紹介分です。

多くの人がつまづく微分。それを入門編、中級編、上級編の3編に分け、読むだけで段階的に理解できる一冊にまとめました。
まずは、「微分」とは何か? その考え方を数学の歴史にも触れながら、わかりやすく解説していきます。入門編は、まさに読み物としての面白さがあり、タイトルの通り、「読むだけ」で微分の考え方、微分の基本がわかります。
中級編は、その数学的な証明から三角関数、指数関数、対数関数などの応用的な微分を解説。「なぜそうなるのか」を順を追って解説していくので、基本がより深く理解できます。「入門編」で理解したことをさらに深めることができます。
そして上級編は、「テイラー展開」から「オイラーの公式」まで。大学数学の入り口まで到達します。難しい内容も、ひとつひとつの概念をかみくだいて、丁寧に解き明かしていきます。

なぜ今、この本を書いたのか

微分は、学校では「公式を覚えて計算するもの」になりがちです。

でも、微分の本質は、そこじゃありません。

微分積分の中心テーマは、結局のところ「変化」です。

何がどのように変わっていくのか―その変化の詳細を捉えるための道具が微分であり、だからこそ本書は「関数」から始まります。 

たとえば日常には、関数の考え方があちらこちらに潜んでいます。

コーヒーを淹れる時間と水の量、働いた時間と報酬、気温の変化と服の選び方……「あるものが変わると、別のものがどう変わるか」を表すのが関数であり、ここから「変化」の読み解きが始まります。 

私がこの本を書いた理由は、ひとえに「変化の見方を渡したい」からです。変化の見方が変われば、社会の見え方も確実に変わります。 

本書は検定試験用ではありません。完璧に理解する必要もありませんし、途中で読み飛ばしても大丈夫です。 大切なのは、「変化をこう捉えるのか」「数学者たちは、こう考えてきたのか」という新しい視点を得ることです。 

「全部わかる」より先に、世界の見方が一段階アップする。

読者の皆さんがそう実感して下さることを目指して書きました。

本書は第一巻として、まず「変化を捉える技術」である微分を徹底的に掘り下げます。 「蓄積を捉える技術」である積分は来月発刊予定の次巻でじっくりと学んでいただく予定です。

ブルーバックスへの想い

ブルーバックスは、僕にとってまぎれもなく「知の入口」でした。

高校生の頃、本屋に行くたび、ブルーバックスの棚の前で「世界は、こんなにも広いのか」と胸を打たれたのをよく覚えています。

あのときの自分に、こう言ってやりたい。

「おい!未来のお前はブルーバックスで本を書いてるぞ。」

いちばん信じないのは本人でしょう(笑)。

だからこそ、感無量です。読者として育ててもらった場所に、今度は著者として戻ってこられました。感謝しかありません。

特徴その1:斬新な「3段階の学習システム」

本書の最大の特徴は、内容が明確に三つのレベルに分かれていることです。とは言っても単に難易度順に並べたのとは違います。

入門編」「中級編」「上級編」で、それぞれ別の学習体験と楽しみ方を提供する学習システムとして設計しました。

【入門編】物語とイメージでつかむ

入門編では、数式を極力避け、微分の「概念」「イメージ」を徹底的に磨き上げます。 

たとえば関数を「信頼できる自動販売機」として説明するところから始めます。 ボタン(入力)を押せば、必ず特定の飲み物(出力)が出る―その「信用できる感じ」が関数の最低条件です。

また、高校数学に登場する三角関数指数関数対数関数とはいったい何だったのかを、これらが生まれた背景に触れながら、イメージ最優先でお伝えします。

【中級編】「微分する力」を身につける


中級編は、いよいよ実技編

積・商・合成関数の微分など、実際の問題解決に必要な手法を扱います。 

もちろん、ただ公式を紹介するのではなく、「なぜその公式になるのか」を図解も交えて丁寧に導き出します。 理由を一つずつ確かめていくことで、「自分の数学力が上がっている」が体感できる―ここを大事にしました。

中級編までで理系の高校生が学ぶ内容は全て網羅します。

【上級編】深遠な美しさを体験する

上級編では、「連続」「極限」を厳密に定義し、大学数学に踏み込みます。 

デデキントの切断」「ε-δ論法」なども登場し、その内容はけっして易しくはありません。しかし、ご安心ください。できるだけかみ砕き、時にはイメージを膨らませる喩えも駆使しながら、ひとつひとつを丁寧に説明しました。

これらの論法が理解できたとき、あなたは、厳密性を担保するために人類が編み出した至高の概念に、名曲を聴いたときのような芸術性をも感じることでしょう。

そして、上級編の最後に待っているのが、「世界一美しい数式」と呼ばれる オイラーの公式 e^{i\pi}+1=0 です。 

ぜひ、この式が立ち上がる瞬間を思う存分味わってください。

そして、「世界一美しい」かどうかは、あなたが決めてください。

特徴その2:「暗号」から「言葉」へ

多くの人が微分でつまずき、色々な数式が「暗号」のように感じられてしまう原因には主に次の3つがあると思います。
  1. なぜそうなるのか、なぜ必要なのかという「本質」を見失ってしまう
  2. 現実世界との繋がりが見えない
  3. 全員が同じペース、同じ深さで学ぶことを強要され、個々の理解度に合わせた学習ができない
「3」については、上記の3段階学習システムで解消していただけるはずです。
さらに、「1」と「2」を壁を取り除くため、本書では、数式を「計算のため」ではなく「思考を深めるため」に登場させます。 ひとつひとつの式には必ず「なぜそうなるのか」という物語も添えました。
物語を得た数学は、もはや暗号ではなく、人類の編み出した「もっとも論理的で、もっとも簡潔な言葉」に変わります。 
ぜひ数式が語る言葉に耳を傾けてみてください。
微分が、この世界に何をもたらし、なぜ必要なのかがきっと分かっていただけると思います!

内容のハイライト:ここが見どころ!

(1)歴史との対話:人類と接線

実は、接線ーー曲線にただ一点で触れる直線――という概念を捉える技術は、数千年にわたり人類が磨き上げてきた「変化を数学的に理解する」ための普遍的な叡智なのです。

古代ギリシャで静的な図形の性質とされた接線は、ルネサンス期に運動を捉える「瞬間の速度」という動的な意味を持ち始めました 。

その後、デカルトやフェルマーによる数式化を経て、17世紀にニュートンとライプニッツが微積分学を確立し、接線は一般的な計算で求められる対象となります 。

静的な幾何学の対象だった接線が、「変化の一瞬を切り取る動的な概念」へ転換していく――この視点の転換こそが画期的でした。 ここには、ニュートンやライプニッツの発想の革命があり、読み物としてのドラマがあります。

現代においても、接線の応用範囲は極めて広いです。

たとえば、AIは、接線を使って「最適解」を見つけています。他にも、現代社会のあらゆる「改善」「最適化」「進歩」の根底には接線の概念があると言っても過言ではありません。

接線について詳しく知れば、微分の意義もより深くわかります。そこで本書では「人類と接線」について詳しく取り上げました。

(2)現代の中の関数と微分

現代社会において、さまざまな関数や微分がどのように活躍しているのかについても、随所に書きました。

たとえば、現代の音楽制作で使われるデジタル音響処理、MP3やAAC といった圧縮技術も、フーリエ変換という三角関数を応用した技術が使われていま す。音楽データの中の、人間の耳には聞こえにくい周波数成分 を数学的に特定し、削除することで、音質を保ちながらデータ サイズを劇的に小さくしているのです。

関数やその微分(導関数)は、(よく揶揄されるように)「社会に出たら役に立たないもの」などではなく、現代文明のインフラと言っても過言ではないことを、きっと実感していただけると思います。

 

(3)ε-δ論法を「ゴルフクラブの性能証明」で説明

理系出身者ですら苦手意識を持ちがちな「ε-δ論法」の意味を「ゴルフクラブの性能証明」の喩えで書きました。我ながらうまくいったと思っているところです。この部分だけでも読んでもらいたいです(笑)。

新しい扉を開くあなたへ

この本は、「数学が得意な人だけの本」ではありません。

数学が苦手だった方文系を選んだ方学び直したい社会人の方――誰もが安心してページをめくれるよう、細心の注意を払って書きました。 

そして私は信じています。

「変化」の捉え方が変われば、世界の見え方が変わる。 世界の見え方が変われば、人生も変わると(大げさなようですが、わりと本気です)。

この本が、あなたにとって新しい旅の始まりになることを、心から願っています。 

最後になりましたが、ブルーバックスという個人的に非常に思い入れの強いシリーズで本を出す機会をいただきましたことを、深く感謝いたしします。

目次(抜粋)

初級編
第1章 関数とグラフ
関数とは何か
関数とグラフの関係
平均変化率と未知の関数
人類と接線
 (デカルト/フェルマー/ニュートン/ライプニッツ)
第2章 いよいよ微分入門
微分とは何か
導関数の表し方
増減表とグラフの形
最大値・最小値
初等関数とは何か
第3章 三角関数とは何か
三角関数の歴史と語源
円による三角関数の定義
度数法と弧度法
三角関数のグラフ
現代を支える三角関数
 (波・角度と長さ・フーリエ展開)
第4章 指数関数・対数関数とは何か
「指数」の語源と指数関数的増加
指数関数とは何か
対数とは何か/なぜ対数が必要か
指数関数と対数関数の関係
ネイピア数 e
指数関数・対数関数の微分
中級編
第5章 微分係数
微分係数の定義
極限とは何か
定義による微分
第6章 x^n の導関数とその導出
順列・組み合わせ
二項定理
微分公式の導出
定数の微分とグラフ理解
【第7章】 2回微分とグラフの凹凸
凸と凹の考え方
第2次導関数
第8章 積と商の微分公式
積の微分公式
商の微分公式
具体例による理解
第9章 合成関数とその微分
合成関数とは何か
合成関数の微分公式
計算例
第10章 微分の可能性
微分可能性と連続性
微分できない点
有名な定理と補足
第11章 三角関数の微分
三角関数の性質
三角関数の極限
三角関数の導関数
第12章 指数関数・対数関数の発展
指数の拡張(0・負・無理数)
指数関数・対数関数のグラフ
対数の性質と常用対数
指数関数・対数関数の導関数
x^r の導関数
上級編
第13章 連続とは何か
実数とデデキントの切断
極限と ε–δ 論法
近似の考え方
テイラー展開
オイラーの公式

付録:画像集

生成AI(NotebookLMやNano Banana Proなど)で遊んた成果を貼っておきます(このBlogに使用した画像もすべて生成AIで作ったものです)。

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