
2026年2月19日に新刊『読むだけでわかる「積分」 理解すれば、本質が見えてくる (ブルーバックス)』が出ます。
- 積分が嫌いだったあなたへ。∫を忘れて、物語からやり直そう
- この本で手に入るもの
- なぜ積分は難しかったのか:犯人は「教える順番」
- 3部構成で、挫折せずに「神秘」まで行ける
- 読み方:数式は「音楽」として楽しんでください
- 現代に効く:「積分」はあなたの生活の裏側で働いている
- いま必要なのは「積分的知性」かもしれない
- 人生もまた「積分」である
- 謝辞
- 目次(抜粋)
- 付録:画像集など
先月出た『微分』編の続刊になります。
以下は出版社(講談社)が付けてくれた紹介分です。
多くの人がつまづく積分。それを入門編、中級編、上級編の3編に分け、読むだけで段階的に理解できる一冊にまとめました。まずは、「積分」とは何か? その考え方を数学の歴史にも触れながら、わかりやすく解説していきます。入門編は、まさに読み物としての面白さがあり、タイトルの通り、「読むだけ」で積分の考え方、成り立ち、積分の基本がわかります。中級編は、定積分の数学的な証明から置換積分、部分積分などの応用的な積分を解説。「なぜそうなるのか」を順を追って解説していくので、基本がより深く理解できます。「入門編」で理解したことをさらに深めることができます。そして上級編は、量子力学の「波動関数」から「フーリエ変換」「ガンマ関数」「重積分」「ガウス積分」まで。天気予報から、CG制作、CTスキャンの解析など、日常のあらゆるところに潜んでいる「積分」が身近なものになる一冊です。
積分が嫌いだったあなたへ。∫を忘れて、物語からやり直そう

「積分」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるでしょうか。
謎の記号 ∫、やたら長い式変形、そして最後に残る「何の役に立つの?」という後味。
もしそうなら、最初に「無罪判決」を出しておきます。
あなたが積分でつまずいたのは、あなたの理解力が足りなかったからではありません。多くの場合、原因はもっと単純です。
最初に微分、次いで積分という教科書の登場順が逆だった。ただそれだけです。
今回、拙著『読むだけでわかる「積分」』 では、学校の積分をいったん忘れてもらいます。
紙と鉛筆も、まずは要りません。計算練習もありません。
ただ「読む」だけで、積分の“心”に触れていただく。
それこそが、本書の目指すところです。
記号を操る前に、意味をつかむ。
公式を覚える前に、発想を知る。
もう、「意味の見えない計算ゲーム」に振り回されるのは終わりにしましょう。
積分は本来、世界をなめらかにつなぐ、美しい思考の道具です。
この本で手に入るもの

忙しい方のために、先に結論を書きます。この本で手に入るものは以下の通りです。
- 積分を「微分の逆」としてではなく、「面積とは何か」から理解し直せる
- 「なぜそう考えるのか」を先に回収するので、公式暗記のストレスが激減する
- 入門→中級→上級の3部構成で、挫折しやすいポイントを踏み外さない
- 数式は、全部わからなくても大丈夫。難しかったら音楽みたいに流してOK
- 微分と積分が一気につながる瞬間(あの定理の感動)も、ちゃんと味わえる
- 真に美しい数学の神秘をのぞける
「積分をもう一度やり直したい。でも、あの苦い記憶が……」
そんな方にこそ、ぜひ読んでいただきたいです。
なぜ積分は難しかったのか:犯人は「教える順番」

高校数学では、まず微分を学び、その後に「その逆が積分である」と説明さます。確かにこの順序は効率的です。試験問題も作成しやすく、計算技能の訓練にも適しています。
しかし引き換えに、見えにくくなるものがあります。
この順番で学ぶと、積分は「意味」を味わう前に、「手順」として定着してしまいがちなのです。
けれども本来、積分はもっと素朴で、人間的な問いから生まれました。
・曲線に囲まれた土地の面積を知りたい。
・細かく分かれた量をすべて足し合わせたら、全体はいったいどれほどになるのだろう。
出発点は、こうした切実で率直な疑問でした。そこにあるのは、世界を理解したいという、人間の根源的な欲求にほかなりません。
本書では、その原点へと立ち返ります。
したがって、最初に登場するのは ∫ 記号でも公式でもなく、「面積とは何か」という定義そのものです。
その土台のうえで、やがて アイザック・ニュートン と ゴットフリート・ライプニッツ が、微分と積分のあいだに架けた橋——すなわち微積分の基本定理——の誕生へと歩みを進めます。
その物語をたどるとき、なぜこの「橋」が人類の知的遺産の中でもひときわ輝く至宝と称されるのか、その理由もまた、自然と腑に落ちるはずです。
3部構成で、挫折せずに「神秘」まで行ける

積分が難解に感じられる理由は、実のところもう一つ存在します。それは、次の三層が同時に押し寄せてくるからです。
第一に、基礎概念:そもそも面積とは何か、体積とは何かという根源的な問い。
第二に、計算技法:置換積分や部分積分に代表される操作上のテクニック。
そして第三に、背後に横たわる哲学:無限や極限、さらには多次元といった抽象的概念。
これらが整理されないまま一度に提示されれば、戸惑うのも当然でしょう。水泳を習い始めたばかりの人が、いきなり外洋へ放り出されるようなものです。息継ぎの仕方も分からぬまま、深みに足を取られてしまうのは無理もありません。
だからこそ本書では、(微分編と同様に)最初から段階を明確に分けました。読者が一歩ずつ足場を確かめながら進めるよう、理解の階梯を丁寧に設計したつもりです。
入門編:数式ほぼゼロで「積分の本質」を掴む

最優先したのはイメージです。
「少しずつでも日々貯金をする」
「雨の降り方を時間ごとに記録し、総雨量を見積もる」
「数ヶ月後の本番のために、毎日の練習に励む」
…「積み重ねの発想」は、私たちの生活の至るところに顔を出しています。積分は、その感覚を、数学として洗練させたものにほかなりません。
入門編では、細かく分割した要素を丹念に積み重ねることによって、全体像を捉えようとする考え方、それが「積分」だということを実感していただきます。
中級編:テクニックを「暗記」するのではなく「仕組み」として理解する

初級編ではイメージだけをお伝えした「微積分の基本定理」の証明にも、中級編ではしっかり取り組んでいただきます。
積分計算の可能性を広げる便利な計算法も紹介します。
ただし、狙いは結果を覚えてもらうことではなく、「仕組み」が見えるようになることです。
単なる記号の操作に見えた「置換積分」も「部分積分」も「なぜそれで計算できるのか」がはっきり見えるでしょう。
料理で言えば、「レシピ通りに作れる人」ではなく、「火加減と塩加減が分かっている人」になっていただきます。
上級編:無限の世界へ。積分が「世界を広げる道具」になる

さあ、いよいよ真に美しい数学の神秘が見えます。
最初に考えるのは「無限に続く壁を有限のペンキで塗りきることができるだろうか?」という不思議な問いです(答えはいかに?)
その後、無限と積分を繋げて、階乗の世界を拡張すれば、「−1/2 の階乗が √π になる」という景色が現れます(え、階乗って 1×2×3×… じゃないの?と思った方、正常です。その正常な感覚が裏切られるから面白いのです)。
積分は、こういうとてつもない場所へ読者を連れていってくれます。
読み方:数式は「音楽」として楽しんでください

ここで、もっとも大切な読み方の心得をお伝えします。
たとえ難解に感じる箇所に出会っても、そこで立ち止まる必要はありません。
私自身の経験から申し上げても、数学の本が最初から最後まで一度で完全に理解できることは、ほとんどありません。「読むだけ」ならなおさらです。
だからきっと本書でも「?」が浮かぶ瞬間はあるでしょう。しかし、それは決して「壁」ではありません。音楽にたとえるなら、思いがけない転調や、技巧的な速いパッセージに出会うようなものです。
すべての音符を正確に聞き取れなくても、曲全体の流れや響きは十分に味わえます。同じように、細部にこだわりすぎることなく、どうか安心してページをめくってください。
やがて読み進めるうちに、ばらばらに見えていた点と点が一本の線となって結びつく瞬間が訪れます。「あの式は、ここにつながっていたのか」と腑に落ちる時が、必ずやってきます。
どうかご安心を。必要なのは、特別な根性ではなく、肩の力を抜いてただ風景を眺める気軽さです。
現代に効く:「積分」はあなたの生活の裏側で働いている

「で、結局、積分って役に立つの?」
そんな素朴な疑問にも、正面からお答えしましょう。
積分とは、「全体量」を定めるための方法論です。連続する変化を細やかに捉え、それらを丁寧に積み重ねることで、初めて浮かび上がる全体像を描き出します。言い換えれば、部分の集積から意味ある総体を構築するための知的な装置なのです。
たとえば、降水量や河川の流量の評価。時間とともに変化する微細な増減を積み上げることで、はじめて総雨量や総流量が算出されます。
医療分野では、薬剤の効果判定にも不可欠です。血中濃度は瞬間値だけでは語れません。時間にわたる「濃度の累積」、すなわち体内での総曝露量を評価することによって、薬効や副作用の強さが見えてきます。
さらに、CGや画像処理の世界では、光や色の情報を細かく足し合わせることで、現実感のある質感や陰影が生まれます。滑らかなグラデーションも、実は無数の微小な計算の積分的処理の成果です。
CTスキャンでは、断層画像を重ね合わせることで立体構造を再構成します。これはまさに、断面の情報を積み上げて三次元像を復元する積分的発想の応用といえるでしょう。
このように、積分は決して机上の抽象概念ではありません。現代社会のさまざまな場面に静かに息づき、目立たぬところで確かな役割を果たしています。派手さはないものの、根幹を支える縁の下の力持ち——それが積分です。
いま必要なのは「積分的知性」かもしれない

現代社会は、あまりにも「微分的」になりすぎたと言えるかもしれません。
科学技術は専門分化を極め、私たちは細かな数値や目先の変化に一喜一憂し、効率という名のもとに時間を細切れに消費しています。
もちろん、問題を最小単位に分解して解決する「微分的な思考」が、人類に大きな恩恵をもたらしてきたことは確かです。
しかしその一方で、
「そもそも、これは何のためのものだったのか」
「全体として、どんな意味を持っているのか」
という視点を、失いつつあるようにも感じます。
今、私たちに求められているのは、積み上げ、繋ぎ合わせ、調和を見出す「積分的な知性」ではないでしょうか。それは、世界をつなぎ止める「愛」ですらあると私は思うのです。
積分とは、単なる面積計な算の道具ではありません。
まとまりのない「個」を繋ぎ、連続的な「流れ」として捉え直すための、思考の技法です。
ニュートンやライプニッツが微分積分の体系を築いたとき、彼らが見ていたのは、計算の結果そのものではなく、この世界を貫く一貫した構造の美しさだったはずです。
微分が「変化を見る目」だとしたら、積分は「全体をつかむ目」です。
両輪がそろうと、世界の見え方が変わります。
人生もまた「積分」である

私が「永野数学塾」で、あえて大人の方々に数学を教えている理由。それは、人生経験を重ねた大人だからこそ理解できる数学の深みがあるからです。
人生もまた、積分の連続です。
日々の小さな出来事は、その瞬間(ある一点)だけを見れば、取るに足らないものかもしれません。あるいは、今まさに困難の只中にいる方にとっては、あまりにも辛い瞬間かもしれません。
しかし、それらを長い区間で「積分」し、積み重ねて眺めたとき、その出来事が持っていた本当の意味に気づく日が必ず訪れます。
数学は私たちに「正解」だけでなく、「信じるに足る根拠」を与えてくれます。論理を積み上げれば、必ず辿り着ける場所がある──この確信こそが、不確実な時代を生きる私たちの、静かな、しかし力強い支えになると、私は信じています。
ぜひ、本書とともに、数学という名の美しい旅に出かけてみてください。
謝辞

最後になりましたが、前作に引き続き、本書の制作に携わってくださったすべての方々に感謝いたします。学生の頃から憧れ、育ててもらったブルーバックスの輝かしいラインナップの末席に加えていただくことができたのは、本当に光栄なことです。
とりわけ、文系のご出身で、読者目線から貴重なアドバイスを下さり、根気強く私の筆を支えてくださった編集担当の森定泉さん、本当にありがとうございました。
目次(抜粋)

入門編
第1章 面積と定積分
◦ 面積の「新定義」=定積分
◦ 「逆微分」とは?
◦ 不定積分とは
第2章 微積分学の基本定理とは?
◦ 微積分学の基本定理のイメージ①
第3章 微積分学の基本定理の実践
◦ 《例1》円の面積と円周
◦ 《例2》球の体積と表面積
◦ 定積分
コラム① 日本人と微分積分
中級編
第4章 面積の「新定義」を確かめる
◦ 《例》三角形の面積
◦ 原始関数一覧
第5章 微積分学の基本定理
◦ 微積分学の基本定理のイメージ②
◦ 微積分学の基本定理の証明①
◦ 定積分の計算公式の証明
◦ 定積分の計算例
第6章 積分テクニック(1)置換積分
◦ グラフの平行移動
◦ 無理関数
◦ 置換積分の例
◦ 置換積分とは
◦ 置換積分がうまくいく形
第7章 積分テクニック(2)部分積分
◦ 部分積分とは
コラム② 積分と無限
上級編
第8章 微積分学の基本定理の証明②
◦ 広義積分
◦ 広義積分①:無限積分
◦ 広義積分②:特異積分
第9章 ガンマ関数とは何か?
◦ ガンマ関数とは
◦ ガンマ関数の性質
◦ ガンマ関数の使い道
▪ 病院の診察待ち時間
▪ n次元球の体積
第10章 重積分とは何か?
◦ 天気予報/物理学/CG(コンピュータグラフィックス)/経済学/医療
◦ 2変数関数
◦ 2変数関数のグラフ
◦ 体積とは?
◦ 重積分とは?
◦ n重積分
◦ 累次積分(重積分の計算法①)
◦ 極座標への変数変換(重積分の計算法②)
第11章 ガウス積分
◦ ガウス積分の実践(卒業試験)
◦ ガンマ関数と階乗の拡張
付録:画像集など
生成AI(NotebookLMやNano Banana Proなど)で遊んた成果を貼っておきます(このBlogに使用した画像もすべて生成AIで作ったものです)。











