1910年の今日(5月19日)、ハレー彗星が接近し、地球が彗星の尾の中に入りました。この時、地球の酸素がなくなる等のデマが相次ぎパニックが起きたそうです。…ということで今日は彗星と1910年のハレー彗星パニックについて書いてみたいと思います。
天体の種類
まずは天体の種類からおさらいです。大まかに分けて、宇宙には恒星、惑星、衛星、彗星の4種類の天体があります。恒星:自分の力で輝く星(例:太陽、シリウス、ベテルギルス等)
惑星:恒星のまわりをまわる星(例:地球、金星、火星等)
衛星:惑星のまわりをまわる星(例:月、エウロパ等)
彗星:太陽系小天体のうち、主に氷やチリなどから出来ていて、
太陽に近づいて「尾」を生じるもの(例:ハレー彗星、エンケ彗星等)
彗星について
う~ん、彗星だけ分かりづらいですね。ちょっと補足します。
彗星は通常、中心部に輝く核と、それを取り巻くぼうっとしたコマ、それに長く伸びる尾から構成されています。
①核(本体)
彗星の核(本体)は、たくさんのチリを含んだ氷の塊です。「汚れた雪だるま」を想像してもらうと近いかもしれません。彗星の核は意外と小さく、例えば1986年の回帰の際に観測されたハレー彗星の「核」は7×7×15km位の大きさで、じゃがいものような形をしていました。
②コマ
核が太陽に近づくと、太陽の熱で暖められて氷が溶け出し、ガスやチリを噴き出してぼうっと光る「コマ」を形作ります(ちなみに、この「コマ」というのはラテン語で「髪の毛」を意味する“Coma”から来ています。「独楽」のことではありません)。私たちが彗星を観測をする時はこのコマが見えるので、ぼうっとした姿に見えます。
③尾
彗星の一番の特徴は何と言っても長く伸びる「尾」にあります。中には地球軌道の直径(3億km)以上もの長い尾をもった彗星もあります。彗星の「尾」はさらに、主に電気を帯びたガスからなる「イオンの尾」と、主にチリからなる「ダストの尾」の2種類に分類されます。イオンの尾は青く輝く淡い尾で、太陽の反対方向にまっすぐ伸びます。一方、ダストの尾の方は白~黄色に明るく輝き、ゆるいカーブを描いています。
彗星はどこから来るのか?
そもそも彗星の本体(核)になる小天体は、海王星より外側にある「カイパーベルト」や太陽系を包み込むように拡がる「オールトの雲」にあったものですが、何かのはずみで太陽の引力に捉えられて太陽に向かって動き出し、「彗星」になったと考えられています。カイパーベルトやオールトの雲は「彗星の巣」と呼ばれることもあります。
このように太陽系の果てからやってくる彗星は、太陽系形成時の物質をそのまま保存した化石のようなものだと考えられています。そのため、太陽系誕生の謎を解き明かしてくれる鍵として期待されています。
彗星の種類
彗星には太陽のまわりを楕円軌道で公転する「周期彗星」の他に一度しか太陽に近づかず二度と戻ってこないものもあります。
《代表的な周期彗星》
エンケ彗星 3.3年周期
ハートレー彗星 6.5年周期
池谷・関彗星 35年周期
ハレー彗星 76年周期
スイフト・タットル彗星 120年周期
ハレー彗星について
ハレー彗星はおそらく最も有名な彗星であり、周期彗星であることが初めて分かった彗星でもあります。
望遠鏡が発明される以前、彗星は夜空の何も無いところから現れ、ゆっくりと見えなくなって消えていくように考えられていました。彗星はしばしば王や高貴な人物の死や、大災害といった不吉なことの前兆と考えられ、昔の人はその出現を恐れていたということです。
イギリスの天文学者エドモンド・ハレーは過去の文献などを詳細に調べ、76年という長い周期を持つ彗星の存在を指摘。1705年の時点で、次に出現するのは1758年であると予言し見事的中させました。しかしハレー自身は1743年に没したため自らの予言的中の瞬間を見ることはできませんでした。
ちなみに前回の出現は1986年、次回は2061年(7月28日)です。
1910年のハレー彗星パニック
①猛毒説
ハレー彗星が太陽面を通過する際、ハレー彗星の尾に含まれる有毒のシアン化合物成分により、地球上の生物は全て窒息死するという噂が広まりました。
②空気消滅説
ハレー彗星接近の際に、地球上の空気が5分間ほどなくなるという噂が一部で広まりました。自転車のチューブや氷ぶくろを買ってその中にためこんだ空気を吸って一時的な酸素枯渇に備える者、水を張った桶で息を止める訓練をする者、全財産を遊びにつぎ込む者、世界滅亡を憂えて自殺する者などが現れたそうです。
この話をヒントに「空気がなくなる日」という小説が生まれ、映画・ドラマ化もされました。またドラえもんの中に出てくる「ハリーのしっぽ」というお話でも、スネ夫の先祖がチューブを買い占めるというストーリーが出てきます。
③その他
海外でも、ローマ法王庁が「贖罪券」を発行したところ、希望者が殺到し、手に入れることができなかった人が悲嘆に暮れるあまり、自殺するという事件も起きたり、「彗星が持ち込むシアンの毒はこれで大丈夫」と、小麦粉を丸めただけのニセの薬を売って金もうけしようとした詐欺師がアメリカで摘発されたり、メキシコでは「処女を生贄にすれば助かる」と信じ込んだ暴徒が、女性を襲撃する事件も起きたり…とにかく大混乱だったようです。
実際のハレー彗星は5月19日に太陽面を通過しましたが、彗星のガスは非常に薄いため、地球が尾の中を通過してもハレー彗星のガスは地球の厚い大気に阻まれて地表に到達することはなく、地球及び生命体には何の影響も与えませんでした。
今日の動画
2010年のハートレー彗星の動画です。4時間を1分に縮めてあるそうです。綺麗です♪