昨夜、まだ観ていなかったこのディスクの中からチャイコフスキーの「悲愴」を鑑賞。
指揮はクラウディオ・アバド、オーケストラはシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ。
とにかく素晴らしい演奏でした。
「悲愴」はCDやDVDを合わせると10枚以上は持っていると思いますし、演奏会で実演にも多数触れてきましたが、私の中では文句なく一番感動的な演奏でした。一緒に聴いていた妻は号泣してました…。
シモン・ボリバル・ユース・オーケストラは「ユース・オーケストラ」ですから10代、20代の若者が中心なのですが、みんな音楽が本当に好きなのでしょう、弦楽器の一番後ろに座っている人に至るまで1人1人が体を揺らしながら、体全体で音楽を感じて演奏しています。そしてそんな様子からは、オーケストラの全員が「表現したい!」という熱い思いを持っていることがヒシヒシと伝わってきます。
そんな熱い情熱と弾けんばかりのエネルギーを持った若き音楽家を前にして、指揮のクラウディオ・アバドは圧倒的な音楽性で、彼らをリードしていきます。アバドは(近年は特に)いつも素晴らしい演奏を聴かせてくれますが、現役の指揮者の中で「メロディーを歌わせる」ことにかけて、この人の右に出る人はいないと私は思います。
アバドの変幻自在の棒から紡ぎ出される音楽はどこまでも自由です。メトロノームに合わせているかのように「インテンポ」で進む小節は1つもないくらい、変わり続けるテンポと音色によってその表現力は他に類を見ないほど深まっていきます。4小節や8小節ではなく、32小節とか64小節とか、時には楽章全体と言ってもいいほどの、息の長いフレーズを聴かせる絶妙なアゴーギグ(緩急)はまさに名人芸。今、これができる指揮者はアバドだけではないでしょうか?
例えば4楽章。チャイコフスキーらしい哀愁を帯びた美しい旋律は有名ですが、アバドはその旋律の前に空気の振動が止まるかのような静謐な瞬間を作り出します。そして、その極上の「間」の後に再び空気が揺れ、流麗なメロディーが立ち上がってくる時の美しさと言ったら!筆舌に尽くしがたいものがあります。
このディスクの演奏は2年前の2010年で当時のアバドは77歳ですが、その音楽は微塵も老いを感じさせません。偶然、明日(6/26)はアバドの79歳の誕生日。とにかく、いつまでも元気でいて欲しいです。
ベネズエラには「エル・システマ」というクラシック音楽の教育制度があります。
これは1975年に「クラシック音楽を演奏させることによって、貧しい子供たちを善良な市民に育成し、麻薬や犯罪から守り、社会の発展に寄与させる」ことを目標に始まったもので、無料で子供たちに楽器を与えて、音楽の基礎知識や演奏を教える制度です。エル・システマのモットーは "Tocar y Luchar(奏でて戦う)"だそうです。
エル・システマの資金はベネズエラ政府や寄付によって賄われています。
eplusより
人口2600万人のベネズエラには、全国30カ所に、約130のユース・オーケストラ、約60の子供オーケストラがあり、25万人の子どもたちが「エル・システマ」に参加しています。その中から選抜されたメンバーで組織したのがシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラです。犯罪が多発するベネズエラで「音楽は社会を変える力となる」という信念のもと、貧困層の子供たちに夢を与える存在となっています。その活動ぶりはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者や楽員の耳に入り、メンバーが無料指導したり、クラウディオ・アバドやサイモン・ラトルといった指揮者が実際に客演で指揮もするほどになっています。
「今まで遭遇した中で、もっとも驚くべき才能を持つ指揮者」
「ドゥダメルと彼の若いオーケストラの音楽に対する情熱に深い感銘を受けた」
「これほどエキサイティングなベートーヴェンは何年ぶりだろう」
など、ラトル、アバド、バレンボイムら巨匠たちから惜しみない賛辞が贈られたグスターボ・ドゥダメル。まさに今、飛ぶ鳥を落とす勢いの新進の若手指揮者ですが、彼もエル・システマの出身です。
若干19歳でシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラの音楽監督に就任。その後アバドやラトルのアシスタントを務め、25際の時、第1回グスタフ・マーラー国際指揮者コンクールに優勝。ベルリン・フィルやウィーン・フィルをはじめ世界中の名門オーケストラに客演し、2009年からはアメリカの名門ロサンジェルス・フィルハーモニックの音楽監督を務めています。
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シモンボリバル・ユース・オーケストラ ノリノリのアンコール!
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