一昨日(10/14)、いわき交響楽団さん(いわ響さん)との定期演奏会が無事終わりました。(下の画像は演奏会当日の朝のホール前。清々しい朝でした♪)
今回はいわ響さんにとって、震災後初の定期演奏会でした。
震災や原発の影響を受けて、いわ響の団員さんは一時散り散りになり、人数も減少しました。また練習場や本番のホールとして使用していたアリオス(いわき芸術文化交流館)も避難所→復旧工事で休館状態…。なんとか稽古を再開しようとするも余震で中止せざるを得ないこともあったそうです。活動再開に向けては、まさに八方塞がりの状態だったことでしょう。でもそんな状況にあってもいわ響の皆さんはあきらめませんでした。「音楽をしたい」という熱い思いを胸にできることから一歩ずつ前に進まれて、ついに2年ぶりの定期演奏会を開催するまでに「復興」されたのです。
今回演奏した曲目は以下の通り。
フンパーディング:ヘンゼルとグレーテル序曲
ショパン:ピアノ協奏曲第2番
《アンコール》
マスカーニ:カバレリア・ルスティカーナ間奏曲
フンパーディング:ヘンゼルとグレーテル序曲
この曲は佐渡裕さんのアシスタントとして兵庫県立芸術文化センターの公演で何度も経験しているため、私自身も体の芯に音楽が入っていて大好きな曲です。それだけに思い入れも強いのですが、本番では振っていてぞくぞくする様な響きがたくさん聞こえてきました。そういう時は指揮者をやっていて一番幸せを感じる瞬間です♪
ショパン:ピアノ協奏曲第2番
この曲は番号は出版の関係で「2番」ですが、実際には1番より先に作曲されていて、ショパンが19~20歳の時に作曲した初のピアノ協奏曲です。2楽章は当時ショパンが思いを寄せていた恋人へのラブレターだったと言われています。
ソリストの鈴木香保理さんは、いわきでご活躍の若きピアニストです。鈴木さんはとても真摯に曲と向きあわれていましたし、オーケストラとアンサンブルをするということに関してもとても意識を高くもっていらっしゃったので、指揮者としては大変有難いソリストさんでした(∩_∩)。
ただ反面、稽古の時は「ソリストに気を遣わせすぎなのではないか」と少し心配もしていたのですが、本番ではやはり音楽家としての魂がうずいたのでしょう(笑)、とてもロマンチックな表現を随所に披露してくれました。オーケストラも私もその音楽に聞き惚れ、結果として室内楽的な協奏曲になったことは、若きショパンの詩情を伝えるにはとても良かったのではないかと(手前味噌ですが)思います(^_-)-☆
今回の演奏会の選曲にあたり、この曲は団員の皆様からのご要望で決まりました。「苦悩から歓喜に至る曲想が今の私たちにふさわしい」というのがその選考理由でした。もちろん私も強く共感しました。ただし…曲は難しいです(^_^;)。
技術もさることながら、ブラームスが構想から完成まで実に21年という歳月をかけただけのことはあって、音楽的な内容はまさにてんこ盛りです。一瞬足りとも「流して」演奏できるところはありません。
この曲は他のオーケストラとも演奏会を行ったことがありますが、今でも譜面をめくる度に新しい発見があり、直前まで表現を悩んだ所は1箇所や2箇所ではありませんでした。そういう意味では一貫した稽古にならなかったことを心苦しく思っています。でも、いわ響の皆さんはそんな私の棒にしっかりついて来てくれました。
本番での皆さんの集中力はすさまじいものがあったと思います。合わせることが難しい懸案の箇所(←随所にありました!)もほぼすべてクリアできましたし、4楽章のコーダ直前のストリンジェンド(だんだん速くするところ)もオーケストラ全員で気持ちを一つにして、乗り切りました!そして迎えた歓喜のコラール!!万感の思いをこめて振り下ろした瞬間に、復旧したアリオス大ホールに響き渡ったあの響きを私は一生忘れないと思います。
アンコール
アンコール1曲目はカバレリア・ルスティカーナ間奏曲。オペラの本編では教会のシーンの後に演奏されるこの曲は祈りの音楽で始まります。私は指揮台の上にいても自分が指揮をしている感覚はまるでありませんでした。オーケストラから自然と出てくる豊かな音楽にただただ身を任せていた感じです。素晴らしい演奏だったと思います。
アンコール2曲目はおなじみのファランドール。これはもう勢い(笑)!後半テンポアップする私の無茶な棒のせいで、アンサンブルとしてはやや難ありになってしまったかもしれませんが(すいません)、お客様には楽しんでいただけたと思います!
会場のお客様からブラボーの掛け声を頂戴しながら、指揮台の上からオーケストラの皆様を見ると目にはうっすらと光るものが…。私もこみあげるものがありました。
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メンバーが足りないところはたくさんの賛助の方々にお手伝いして頂いたので、全員が揃うのは本番前日、というアマオケとしてはなかなか厳しい状況でもありました。でも賛助の皆さんも、いわ響の皆さんの熱い思いを意気に感じてやはり特別な思いで臨んでくれたのでしょう、本番では得も言われぬ一体感が生まれたように思います。
やっぱり音楽って素晴らしいと、帰りの車を運転しながらつくづく思いました。人は音楽がなくても生きていくことはできます。しかし、今回のような未曾有の大災害では、音楽にしか癒やせない心や時間というものもあったのではないでしょうか。絶望や不安の中にある人々にとって、音楽に共鳴する心はひと筋の光明になり得るということを、より信じるようになりました。良い音楽を届けたい、という想いは最初に音楽家を志した時から変わることはありませんが、音楽が勇気や元気に繋がることを願う気持は震災後により強くなったような気がします。
今回の演奏会はいわ響さん