永野裕之のBlog

永野数学塾塾長、永野裕之のBlogです。

数と宇宙の大きさを実感する

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photo credit: THEfunkyman via photopin cc

「1兆まで数えるとどれくらいかかる?」

先日、長女(5歳)にこう尋ねられたので、その場で概算をしてみました。

「1秒につき1ずつ数えたとして(←桁が増えてくると追いつかないでしょうが…)、1時間が3600秒で1日が24時間だから、1日で約9万秒か。まあ10万までは数えられることにしよう。1年では3650万ということだな……ってことは3年で約1億まで数えられる。
で、1兆は1億の1万倍だから……おぉ~3万年もかかるのか!」

と一人で驚いた後、長女に

「まったく眠らずに、食事もとらずに、ただひたすら数えたとしても3万年くらいかかるよ」

と言うと、

「ええ~~~~~っ!\(◎o◎)/!」

と、大いに驚く長女。よしよし、良いリアクションだΨ( ̄∇ ̄)Ψ

 

娘を驚かすことができて満足でしたが、3万年というのは確かに凄い年数です。1兆というのはそれくらい大きな数なのですね(聞いた話では人間が一生のうちに打つ鼓動は約30億回だそうです)。「兆」という単位は国家予算とか、細胞の数とかで見ることはありますが、普段はほとんど使わない単位です。いわんや「○兆個」のものを目にする機会は滅多にありません。私たちが「兆」のスケールを実感できないのは無理もないことです。

 

数字のモノサシ(寄藤 文平)

そういえば、最近こんな本を読みました。楽しいイラストと喩えで、数字の大きさを実感できるように工夫されています。

脳神経の本によれば、人間の脳は、「1」、「2」、「3」までは「豚」、「羊」、「猿」みたいな感じで、見ただけで数を感じとることができるそうです。4、5になると判別まで時間がかかるようになり、7を超えると「数える」ことをしないと数を感じ取れません。

「1、2、3、…4、…5、……いっぱい」

それが、人間の一番素直な数に対する感覚のようです。

なるほど。言われてみると確かにそうかもしれません。

そこで、数をもっと実感できるようになるために、自分なりのモノサシを持とうというのがこの本の趣旨だと思われます。例えば、体をモノサシに使うと、

爪の先から両腕までを使って、1万倍までを比較することができます。両腕を「1億」とすると、爪の先が「1万」、両腕が「1万」のとき、手のひらが「1000」、爪の先は「1」になります。

だそうです。本にはふんだんにイラストが入っていて(というかイラストが主役)、もっと直感的に理解できます。

 

さて、大きさが実感できないものとしては、やはり宇宙のスケールはその筆頭ではないでしょうか?(強引な展開ですいません)。そこで、太陽系の大きさと、宇宙に流れる時間を実感できる喩えを紹介しましょう。

 

太陽系の大きさ【太陽が東京ドームだったら】

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上の画像は太陽と各惑星の大きさを比較したものですが、これでもまだあまり実感できないかもしれませんね。惑星の大きさや、ついでに惑星の公転軌道の大きさを実感するには、清水義範さんの「おもしろくても理科」の中にある「太陽が東京ドームだったら」が面白いです。

太陽(直径約140万km)が東京ドーム(直径約200m、東京水道橋)だとすると…

  • 地球(直径約1万2500km)→直径約183cm。小金井市のあたりを周回。
  • 水星(直径約5000km)→直径約70cm。高円寺のあたりを周回。
  • 金星(直径約1万2000km)→直径約174cm。吉祥寺のあたりを周回。
  • 火星(直径約6800km)→直径約約97cm。立川市の西の外れあたりを周回。
  • 木星(直径約14万3000km)→直径約20.5m。沼津市のあたりを周回。
  • 土星(直径約12万km)→直径約17.2m。浜松のあたりを周回。
  • 天王星(直径約5万1000km)→直径約7.3m。大阪のあたりを周回。
  • 海王星(直径約4万9000km)→直径約7.1m。広島のちょっと手前あたりを周回。

こうして縮尺してくれると、分かりやすいですね!やっぱり木星土星は桁違いです。


 

 

宇宙が誕生してから現在までが1年だとすると…【宇宙カレンダー】

Carl_Sagan_Planetary_Society カール・エドワード・セーガン(Carl Edward Sagan)

今度は、宇宙に流れている時間を実感してみましょう。最新の研究によると、ビッグバンによって宇宙が誕生してから現在までは約138億年です。とてつもない時間ですが、アメリカの天文学者カール・セーガンが1980年に放映されたテレビ番組(コスモス)の中で披露した「宇宙カレンダー」を使えば、非常に直感的にこの時間の長さを理解できます。宇宙カレンダーでは宇宙の誕生から現在までを1年に縮めて考えます(ただし、当時は宇宙の年齢を約150億年だとしていました)。

宇宙が誕生してから現在までが1年だとすると…

  • 1月1日:ビッグバン/宇宙誕生(138億年前)
  • 4月11日:銀河系誕生(100億年前)
  • 9月1日:太陽系誕生(46億年前)
  • 9月14日:地球誕生(45億年前)
  • 9月19日:原始生命誕生(39億年前)
  • 12月25日:恐竜出現(2億5千万年前)
  • 12月26日:哺乳類出現(2億年前)
  • 12月31日
      21時28分:猿人出現(400万年前)
      23時52分:現生人類出現(20万年前)
      23時59分37秒:農業の始まり(1万年前)
      23時59分48.5秒:文字の発明(5000年前)
      23時59分59.5秒:近代科学の開幕(200年前)

となります。つまり、人類が誕生してからまだわずか8分で、近代科学が幕を空けてからはわずか0.5秒しか経っていません。ちなみに太陽の寿命は翌年の5月くらいまでです(計算には↓の「宇宙カレンダー電卓」を使いました)。

宇宙カレンダー電卓

こうしてみると、私たちの人生なんてまばたき1回分くらいの「えっ?今なんかあった?」という程度のことかもしれません。でも、どんなに短くても私たちは次の「時間」を作る責任を持っています。この点について、「宇宙カレンダー」を紹介した番組の結びの言葉が大変示唆に富んでいますので引用したいと思います。

私たちは150億年にわたる宇宙の進化の継承者です。私たちは選択できます。生命を高め人間をつくった宇宙を知ることができます。反対に無意味な自己破壊で150億年の遺産を無駄にしてしまうこともできるのです。次の宇宙カレンダーの最初の1秒に何が起きるかは、私たちの知能と宇宙についての知識を使って、私たちが今ここで何をなすかにかかっているのです。


カール・セーガン「宇宙カレンダー」短縮版 - YouTube