永野裕之のBlog

永野数学塾塾長、永野裕之のBlogです。

佐渡裕さん指揮「新日本フィルハーモニー定期演奏会」に行ってきました!

昨日(2024/04/20)、佐渡裕さんの演奏会に行ってきました!

私は20〜30代の頃、佐渡さんのアシスタントをさせて頂いておりました。

実は、佐渡さんにお会いするのは十数年ぶりでしたが、終演後に楽屋に伺うと、以前と変わらず「お〜久しぶり!!」ととても暖かく迎えてくださいました。佐渡さんは大きな体の、その何倍もの大きな心でまわりの人を包み込む包容力をお持ちです。アシスタントをさせて頂いていた当時からずっと感じていたそんな彼の魅力に私自身が包まれて、昨日はとても幸せでした。

《公演データ》
新日本フィルハーモニー交響楽団 第655回定期演奏会
トリフォニーホール・シリーズ
2024年4月20日(土)14:00 トリフォニーホール
指揮:佐渡裕
ソプラノ:小林沙羅
メゾ・ソプラノ:林美智子 
妖精パック:ウエンツ瑛士
合唱:One Voiceちば
合唱指揮:加藤洋朗
《演目》
ベートーヴェン:交響曲第2番 ニ長調Op. 36
メンデルスゾーン:劇付随音楽「夏の夜の夢」Op. 61より抜粋

プログラムの前半に演奏されたベートーヴェンの交響曲第2番は、ベートーヴェンの9つの交響曲の中では、おそらく一番「マイナー」ですが、私自身は一番勉強した曲です。

プレトークで佐渡さんも仰っていた通り、この曲は、若手指揮者のためのコンクールなどで課題曲になることが多いですし、私は過去に2度、アマチュアのオーケストラと演奏したことがあります。

昨日の新日本フィルハーモニーの編成は、この曲としては大きめ(1stヴァイオリンが10人位)でした。しかし、人数の多さゆえの緩慢さは微塵もなく、音楽監督として2年目を迎えられた佐渡さんの動きにオーケストラの皆さんはとても敏感でした。

この曲は、プロのオーケストラにとっては、技術的にはそう難しい曲ではないと思いますが、細部が練り上げられていて、緻密なリハーサルを積み上げられたことがよく伝わってきました。

特に、2楽章の美しさは特筆すべきだと思います。最弱音(pp)から最強音(ff)に至る階調豊かな強弱のグラデーションと、緊張感を保ったまま長いフレーズを歌い上げるスケールの大きさは圧巻でした。

3楽章もスケルツォ(scherzo。原義:たわむれ)らしい遊び心が感じられました。曲を知っている者からすると「あれ!?」と一瞬心配になるような、テンポを外れる瞬間があったのですが、そのあと一糸乱れるアンサンブルに入っていく運びには思わずニヤリとしました。

1楽章や4楽章の疾走感も非常に小気味よく、速くても決して雑にならないアンサンブルから、佐渡さんとオーケストラの皆さんのこの曲への愛情を感じます。

後半は、メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」からの抜粋。

妖精パック役のウエンツ 瑛士さんの見事な進行のもと、物語の筋と音楽自身のドラマが生み出す相乗効果で、会場が一気にお伽話の雰囲気に包まれます。

特に、観客を妖精の森に誘う夜想曲のえも言われぬ美しい響きや、有名な結婚行進曲の格調の高さに加え、佐渡さんの大きな魅力の一つである「いい音」がホールに響き渡る度、理屈抜きの感動を覚えました。

定期演奏会でこの曲が取り上げられることは珍しいと思います。それだけに昨日の演奏会は、この曲の魅力を再発見させてくれました!

決してAIには「肩代わり」されないもの

昨今のAIブームで、実に様々なものをAIが肩代わりするようになりました。

しかし、音楽を演奏する者とそれを享受する者の心の交流は、決してAIに肩代わりされることのない、人間らしさそのものです。

もしかしたらいつか、AIも「心」を持つようになるかもしれません。

それでも、生身の人間が作品に込められた想いを感じ合う、昨日のトリフォニーホールに流れたような時間は、永遠にかけがえのないものであり続けるでしょう。

実は、昨日は日頃から仲良くさせて頂いている画家の松田俊哉さん夫妻とご一緒でした。松田さんは、佐渡さんがウィーンに留学していた時代からの親友で、昨日も思い出話に花が咲いていました(松田さんは、びっくりするほどクラシック通です)。

この記事のトップ画像は、松田さんが書かれたバーンスタイン小澤征爾さんの似顔絵です。2人は佐渡さんの師匠であり、佐渡さんはこの2人に才能を認められてプロの指揮者としてのキャリアをスタートさせました。

私は、十数年前に松田さんの個展に伺ったとき、偶然この絵と出会い、惚れ込んで買わせていただきました。私にとってもこの2人の指揮者は、クラシック音楽を聴くようになった中学生のときから特別な指揮者だったからです。

告知

今年の7月6日と7日(七夕イブと七夕)に、歌劇団テオドーロという団体で指揮をさせていただきます。演目はドニゼッティの「愛の妙薬」です。アリア「人知れぬ涙」が特に有名ですが、全編楽しい音楽に満ちあふれている名曲です。ご興味のある方は、是非お越しください。