5/22に『「数学的センス」を磨く フェルミ推定』(かんき出版)が出ます。
出版社の内容紹介
以下は出版社がつけてくれた内容紹介です。
数学を勉強して得られる力「数学的センス」が、たったこの一冊で身につく!
痛いほど耳にする「数学ができるようになれ!」という風潮。
「AI時代の必須スキル」「数字で考えよ」「ロジカルに考えるためには数学を学べ」……。しかし、“今”から数学を学び直すのは大変です。
「文系だから……」とあきらめたくなる気持ちもわかります。
そんな方のために、手っ取り早くエッセンスが身につくこんな本ができました!本書は中学生から大人まで数学を教える大人気数学塾の塾長、永野裕之先生によるフェルミ推定トレーニング本です。
クイズ感覚で読み進めるうちに、これからの時代に生きる能力が身につきます。
どういう本か
フェルミ推定をご存知でしょうか?
フェルミ推定というのは、簡単に言ってしまえば「だいたいの値」を見積もる手法のことです。
《参考記事》
私が学生だった90年代には「フェルミ推定」という言葉はありませんでした。「フェルミ推定」という言葉は、2004年に出版されたスティーヴン・ウェップ著『 広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由―フェルミのパラドックス』(青土社)の中で初めて使われたと言われています。
ビジネスシーンでは、GoogleやMicrosoftといった企業が入社試験に「東京にはマンホールがいくつあるか?」のような問題を頻繁に出すようになったことで、注目を集めるようになりました。フェルミ推定の問題を出題すると、受験者が論理的思考力=問題解決能力を持っているかどうかが判断できるため、近年では、様々な企業の入社試験でこの手の問題が出題されています。
本書は(タイトル通り)、フェルミ推定を使って「数学的センス」を磨こうという、意欲的な本です。
2023年は、OpenAIの「ChatGPT」、Microsoftの「Bing AI Chat」、Googleの「Bard」などが並び立ち「会話型AI元年」の様相を呈しています。
「これからはAIに聞けば何でも答えてくれる」と期待する方は多いかもしれません。しかし、AIに頼りすぎることにはリスクがあります。なぜならAIは、学習データに誤りや偏りがあれば、間違った結果を出力するからです。
むしろ、会話型AIの登場によって、正しい情報と間違った情報の間の線引きがますます難しくなったと、私は感じています。
AI技術が台頭してきた現代こそ、自分の頭で考えて、次々に起きる新しい問題に臨機応変に対処できる思考力が必要なのです。
ではどうすれば、その思考力が身につくでしょうか?
私は、「数学的センス」を磨くことが最も近道だと考えます。
そこで本書では、フェルミ推定を使って、数学的センスとはどういうもので、どうすれば身につくのか、この1冊を読めばわかるように解説していきます。数学が苦手な方でも、数学で挫折した経験がある方でも、中学や高校の数学の授業とはまったく別物ですから安心してください。
フェルミ推定には関数も方程式も統計も必要ありません。使うのは簡単な四則演算(足し算、引き算、掛け算、割り算)だけです。
フェルミ推定を通して、数学的センスが身につけば、情報を取捨選択できるようになるだけでなく、自分自身の考え方も客観的に捉えられるようになります。数学的センスは、いわゆるメタ的な思考にもつながるわけです。これが問題解決能力を飛躍的に伸ばす事は言うまでもありません。
先が見えないこんな時代だからこそ、自分を支える軸となる数学的センスを身につけていただきたい。これこそが本書の狙いであり、数学にコンプレックスをお持ちの方に寄り添ってきた私の願いです。
今こそ、考える力を!
つい最近(2023年の3月末)、米投資銀行のゴールドマン・サックスが、人工知能(AI)によって3億人分のフルタイムの仕事が取って代わられる可能性がある、というショッキングな報告書を発表しました。2045年にはAIが人間の知能を超える「シンギュラリティー」を迎える、という試算もあります。
もしかしたら人間の尊厳が、存在価値が脅かされる時代がすぐそこまで来ているのかもしれません。
でも本当にそうでしょうか?
かのパスカル(1623~1662)がパンセに書いた「人間は考える葦である」の言葉を思い出してください。
人間は自然界における最も弱い存在かもしれない。しかし、同時に最も優れた存在でもある。それは人間が自分自身や宇宙や神について考えることができるからだ。
…というパスカルのメッセージは、第4次産業革命が進行中の今こそ深く味わえると私は思うのです。
数学的センスは「考える」エンジンになります。
どんなに時代が変わっても、どんなに技術が進んだとしても、考える人間の価値は決して揺らぐことがないと信じて、この本を世に出させていただきます。
目次
PART Ⅰ 「数学的センス」が必要な理由
- 小・中・高12 年間、数学を学ぶ理由
- 数学的センスは話し方に表れる
- 人を感動させる力もある数学的センス
- 「美しい」のしくみ
- 「正解」より「正しい考え方」が求められている
PART Ⅱ 数学的センスの7つの力
- 数学的センスがあるか、ないかを問う問題
- 「情報整理力」――数学的センスの7つの力①
- 「視点の多様化力」――数学的センスの7つの力②
- 「具体化力」――数学的センスの7つの力③
- 「抽象化(モデル化)力」――数学的センスの7 つの力④
- 「分解力」――数学的センスの7 つの力⑤
- 「変換力」――数学的センスの7 つの力⑥
- 「説明力」――数学的センスの7 つの力⑦
PART Ⅲ フェルミ推定 解法の技術
- フェルミ推定とは何か
- フェルミ推定の手順を例題でマスターしよう
- フェルミ推定の「超基本公式」――フェルミ推定のポイント
- 「情報の整理」で仮説を立てる――フェルミ推定のポイント
- 問題の要素を細かく「分解」――フェルミ推定のポイント
- モデル化できたあとの手順のポイント
PART Ⅳ 数学的センスを磨く「フェルミ推定トレーニング」
- 《例題1》 超基本問題
一家で、 どのくらいワインを飲んでいる? - 《例題2》 基本問題
日本全国ではどれくらいワインが飲まれているか - 《例題3》「概算センス」が磨かれる問題
1兆秒数え上げるにはどれくらいの時間がかかるか - 《例題4》「数値化センス」 が磨かれる問題
年末ジャンボ宝くじを積み上げると高さは天まで昇る? - 《例題5》 「検証センス」が磨かれる問題
マイバッグ持参で節約、意外すぎる年間の金額 - 《例題6》「説明センス」 が磨かれる問題
食洗機で家事を時短、わかった人から得をする! - 《例題7》「多様な視点センス」が磨かれる問題
会社のペーパーレス化、 推定してわかる思わぬコスト - 《例題8》 「変換センス」 が磨かれる問題
業界の規模感が見えてくる! ジーンズの市場規模 - 《例題9》 「モデル化センス」 が磨かれる問題
離れて暮らす2人が、たまたま同時に月を見る確率 - 《例題10》 「分解センス」 が磨かれる問題
職場にいる時間と自宅にいる時間、長いのはどっち? - 《例題11》 「多様な視点センス」が磨かれる問題
一流教師になるまでの総時間。 応用が利く数式モデル - 《例題12》「分解センス」が磨かれる問題
どれくらいの音楽を聴くか、 一生分を推定する - 《例題13》 「多様な視点センス」 が磨かれる問題
年間メッセージ数、LINEだけでこんなにも飛び交っていた! - 《例題 14》「変換センス」 が磨かれる問題
東京ドームに必要なトイレの数は? - 《 例題 15》 「情報整理センス」が磨かれる問題
大手企業の赤字 20 億円。どれくらいヤバい? - 《例題 16》 「具体化センス」が磨かれる問題
世の中の見る目が変わる!クレープ屋の開店に必要なバイトの人数 - 《例題 17》「情報整理センス」が磨かれる問題
お弁当のレシピが被るお友達の人数 - 《例題18》 最難関の総合問題
カフェのコーヒー豆の市場規模
謝辞
本書は、樺山美夏さんに執筆のご協力をいただきました。この場をお借りして感謝申し上げます。また、かんき出版の田中隆博さんにも企画・編集面で様々ご尽力をいただきました。他にもたくさんに方のお力添えがあって、本書は皆様のお手元に届きます。関わってくださったすべての方に厚く御礼申し上げます。