9/11(金)に新刊が出ます。タイトルは『 統計学のための数学教室 』です。
統計を学びたくても、そこに登場する数学がわからない。そんな方のために書きました。
以下は、「はじめに」からの抜粋です。
「統計リテラシー」の世代間格差
今年(2015年)の春、「新課程」の教育を受けたいわゆる「脱ゆとり世代」の第1期生が高校を卒業しました。彼らは理系・文系の区別なく「データの分析」という数学Iに新設された必須単元の中で、ヒストグラム、箱ひげ図、分散、標準偏差、相関係数といった統計の基礎を身につけています。
一方、1974年生まれの私も含め、ほとんどの社会人にとって統計は(履修する人が少ない)選択単元だったはずです。統計を学校で学んだことのある人はごく一部ではないでしょうか?
今更、私が言うまでもなく、昨今のビジネスシーンでは統計が使える能力、すなわち「統計リテラシー」が必須になっています。しかし2015年以降に高校を卒業する世代と、2015年以前に高校を卒業した世代の間には統計リテラシーの点において小さくはない「格差」があるのが現状です。
社会人が統計を理解できない理由
そんな社会情勢を映すように、永野数学塾(大人の数学塾)にいらっしゃる社会人からも
「統計を教えて欲しい」
というリクエストはとても多いです。私は最初
「これだけ世にたくさんの統計の本が出ているのに、わざわざ習いに来るということは、きっと踏み込んだ統計の話が聞きたいんだろう」
と想像していたのですが、実際に指導を始めてみるとほとんどの生徒さんは統計そのものより、そこに登場する数学に躓いていることが分かりました。統計本に出てくる中学~高校レベルの数学が分からないために本当に基礎的な統計のことが理解できずに止まってしまうのです。逆に言うと、数学に明るくなれば統計自体を学ぶことはたくさんの良書が助けてくれます(本書の巻末に参考文献をまとめました)。
しかし不思議なことに「統計に使う数学」そのものを解説している本はほとんどありません。だからこそ私は本書の筆を取りました。この本は学校で統計を習わなかった社会人が統計を自学自習するのに必要な数学を学んでもらう本です。
本書の内容
第1章【データを整理するための基礎知識】では
…基本用語を押さえて「脱ゆとり世代」に追いつこう
第2章【データを分析するための基礎知識】では
…√と乗法公式から標準偏差の意味を理解する
第3章【相関関係を調べるための数学】では
…2次方程式を使って、相関係数「−1 ≦ r ≦ 1」の謎を解く
第4章【バラバラのデータを分析するための数学】では
…確率とΣがわかれば確率変数が腑に落ちる
第5章【連続するデータを分析するための数学】では
…極限と積分で、正規分布と検定の本質をつかむ
詳しい内容は、こちら(ダイヤモンド社サイト)にある通りですが、本書では中学~高校で学ぶ数学の中から統計に必要な数学を厳選してあります。割り算の意味や割合(第1章)といった小学校レベルの算数から始まり、平方根、多項式の計算(第2章)、関数とグラフ(第3章)、場合の数、確率、Σ記号(第4章)、極限、積分(第5章)へと至ります。かなり盛りだくさんです。そのひとつひとつをできるだけ丁寧に説明しました。数学部分はもちろん、統計部分の解説も含めてここまで詳しく書いてある本は、他にはないだろうと自負しています。
今回も『 大 人のための数学勉強法 』、『 大人のための中学数学勉強法 』でご一緒したきたみりゅうじさんのイラストには大いに助けていただきました。また、監修の専修大学心理統計学研究室の岡田健介先生からは、統計の部分の解説に関して目から鱗が落ちまくるレクチャーを存分に頂き、それらはすべて紙面に反映させています。
それから、各章ごとに下のような数学と統計を結ぶフローチャートを載せたことも本書の大きな特徴です。
フローチャートによって、ある統計量を理解するためにはどのような数学が必要になるかを一目で分かってもらえると思います。
本書では「脱ゆとり世代」が必須単元として学ぶ統計の内容は第3章までにまとめ、第4章では離散型データ(バラバラのデータ)の確率分布、第5章では連続型データの確率密度関数等を理解できるようになることを目指します。つまり集めたデータから必要な情報を読み取るいわゆる記述統計を総括し、部分的なデータから全体を推し量る推測統計の入り口までをご案内するのが本書の目的です。
統計のための数学は社会人に必須の数学リテラシー
私は本書を書きながらつくづく思いました。ここに登場する数学は(統計のために選択したものではありますが)社会人ならば誰もが身につけておくべき「数学リテラシー」そのものだと。本書に登場する数学を身につけてもらえれば、数学に明るい商談相手に臆することはなくなるでしょうし、数字が踊る資料やExcelの関数を理解したり、グラフを使ってより説得力のあるプレゼンをしたりすることもきっとできるようになります。もちろん、論理的な思考力も磨くことができるでしょう。
ご興味のある方は是非、お手に取ってみてください。
【Amazon】
【出版社(ダイヤモンド社)サイト】立ち読みもできます!