12/5に新刊『 やりなおし高校物理 (ちくま新書 (1454)) 』(筑摩新書)が出ます。電子版は少し遅れて12/20発売予定です。
出版社キャッチコピー
以下は出版社がつけてくれたキャッチーコピーです。
高校の教科で高い壁として立ちはだかる物理。数式、定理、法則など、覚えなければいけないことが多く、かつ理解しないと問題は解けないため、苦手なまま終えた人も多いだろう。そんな人も安心してほしい。図と文章で理解したのち、最低限の数式さえ確認できれば、もう物理は怖くない。得意だった人もその背景を知れば、より楽しくなるはず。物理の勘所をざっくりとつかまえて、やさしく、そして面白く解説する一冊がここに誕生した。
どういう本か?
物理学の対象は文字通り森羅万象に及び、力学、熱学、音響学、光学、電磁気学、素粒子物理学、天体物理学、物性物理学など多岐にわたりますが、本書では、高校の物理の主要4分野である「力学」、「熱力学」、「波」、「電磁気」の4分野を扱っています。
「やりなおし高校物理」というタイトルの本書を書かせていただくにあたって、特に気をつけたのは次の4点です。
(1)読み物として面白いこと
できるだけ教科書的にならないように気をつけました。また身近な例を用いることで、読者の方の興味を惹きつけ、先を読みたくなるように留意したつもりです。また各節の終わりにはこぼれ話的な「コラム」も設けました。
(2)数式を極力使わないこと
全編にわたり極力数式を使わずに説明してあります(この点がもっとも苦心しました)ので、数式アレルギーをお持ちの方にも楽しく読んでいただけると思います。ただ、物理を通して数学を見ることで、数や数式の意味と意義がとてもよくわかるようになるというのは、物理を学ぶ醍醐味の一つです。そこで、時々「数式の博物館」と名付けた横書きの頁を挟ませてもらいました。本文で説明した物理現象のイメージをもって数式を眺めてもらうことで、物理的にも数学的にもきっと新しい気づきが得られるはずです。
(3)図を多く用いること
数式がない分、どうしても図によってイメージを膨らませていただくことは必要だと考えました。こうした縦書きの新書としては図の分量は異例なほど多いと思います。
(4)物理法則が発見された経緯(科学史)を紹介すること
科学史に多くの頁を割いているのは本書の特徴のひとつです。人類がどのようにある自然法則を見つけたのかを知っていただくことは、どうしてその物理法則が必要になったのかという疑問にお答えするだけでなく、ひとつひとつの法則に人間の血を通わせることにもなると思います。過去の天才たちが苦労の末に偉業を成し遂げるまでのドラマをどうぞお楽しみください。
本書では、「力とはなにか」、「温度とはなにか」、「光とはなにか」、「電気とはなにか」といった素朴でかつ根源的な命題をひとつひとつ解決しながら、これまでに人類が掴んだ宇宙の真理にせまっていきます。結果―すべての科学者がそうであるように―「ああ、自然界というのはなんて美しいのだ」と感じていただければ、筆者としてこれ以上の喜びはありません。
本書の読者対象は?
本書の読者対象は主に、高校時代に物理を選択したものの、あまりよく理解できなかった方や、現役の高校生の方を考えています。学校の授業や教科書とはひと味違った角度から改めて紹介することで、物理に対する立体的な理解を提供し、物理という学問の魅力を再発見していただくきっかけになることを目指して書きました。
また、本書は現在小学生や中学生のお子さんをお持ちの親御さんにもきっと役立てていただけると思います。中学受験の理科で問われる内容や、中学の理科で学ぶ内容は、高校物理の内容を小出しにしている面が多々あるからです。お子さんが理科に躓くのは、全体像が見えないせいであることが少なくありません。そんなときは、是非本書で得られる知見を教えてあげてください。きっと、喜ばれると思います。
目次
第1章 力学
- 運動の表し方
- 運動の三法則と色々な力
- エネルギー保存則
- 運動量保存則
- 万有引力と円運動
コ ラ ム ガリレオがもたらした測定と数学による近代科学の幕開け
コ ラ ム 恋愛ドラマと力学的エネルギー保存則
コ ラ ム 運動量と運動の三法則
コ ラ ム 万有引力と新発見
第2章 熱力学
- 気体の圧力と体積
- 気体の変化
コ ラ ム 天気の3要素
コ ラ ム 熱の正体がわかるまでの迷走 ―― エネルギー保存則か「熱量保存則」か
第3章 波動
- 波の基本
- 音
- 光
特別コラム 地震のメカニズムと地震波
コ ラ ム 悪魔の楽器「アルモニカ」
コ ラ ム アインシュタインと光の速さ
第4章 電磁気
- 電場と電位
- 回路
- 電流と磁場
コ ラ ム 「動物電気」から電池の発明へ
コ ラ ム クーロンとオームに先んじた「趣味の人」キャヴェンディッシュ
特別コラム 特殊相対性理論入門
数式の博物館
- 1 等加速直線運動を表す数式
- 2 摩擦力と浮力の数式表現
- 3−1 運動エネルギー
- 3−2 重力による位置エネルギー
- 3−3 弾性力による位置エネルギー
- 4 重心速度一定と運動量保存の法則
- 5 等速円運動の加速度
- 6 ボイル・シャルルの法則を導く
- 7 ドップラー効果の公式を導く
- 8 ホイヘンスの原理による屈折の法則と反射の法則
- 9 オームの法則を導く
サンプルページ
謝辞
私は「地球惑星物理学科」出身ですが、実は、物理の純度100%の著作はこれが初めてです。学生時代に物理が苦手だった方にも、図と文章と科学史で高校物理のエッセンスを楽しみ、時には感動して頂けるように苦心しながら筆を進めました。おかげさまで私としては新境地が開けたと思っています。
その分、原稿は遅々として進みませんでした。でも編集担当の橋本陽介さんは辛抱強く待って下さった上に、励ましの言葉も幾度となくかけて下さいました。原稿について貴重なご意見も多数頂戴しました。この場をお借りして改めて感謝申し上げます。本書を世に送り出すためにお力添えを頂いたすべての方に重ねて御礼申し上げます。